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○頸椎椎間板ヘルニア

【総論】

椎間板とは、脊柱に存在する線維性軟骨で、外側の丈夫な線維からなる線維輪と内側のゼリー状の髄核からなる。

椎間板は、椎体と椎体の間にあり体重の支持、クッション、脊柱の動きに関与している。


椎間板ヘルニアとは、椎間板変性の一つの病態を指し、椎間板変性により線維輪に亀裂が生じ、髄核が線維輪から出てくることを言う。

椎間板は脊柱の合計23個、存在するが椎間板ヘルニアを起こすのは、腰部がほとんどで、その次が頚部、そして胸部ではほとんど見られない。


診断方法は、MRIなど画像所見で椎間板の突出がみられ、症状と画像所見とが一致しているなど。


たまに、レントゲン画像から椎間板ヘルニアを診断された方がいるが、レントゲン画像では、椎間板は写らない。


椎間板ヘルニアの原因として、以前は肉体的ストレスが大きな要因と考えられていたが、近年の研究では、遺伝的要素がもっとも大きく、肉体的ストレスはほとんど影響していないことが分かった。


そのことを証明する信頼性の高い研究を下記に3つ紹介する。

腰痛研究の分野ではあるが、発生機序は同じであるため、ほぼ同じと考えられる。


【椎間板ヘルニア 世界の研究】 Part1

● 1995年、Battie MCらによって脊椎関連学術誌「Spine」に発表。(Volvo賞受賞)※

※ Volvo賞とは、脊椎関連のノーベル賞と言われ、その年のもっとも優れた研究に送られる賞である。

肉体的ストレスが一致しない男性の一卵生双生児115組を対象に、詳細なアンケートとMRI撮影で椎間板変性の危険因子を調査した。

 

その結果、椎間板変性は、仕事やレジャーによる身体的負担、車の運転、喫煙習慣よりも、遺伝的因子の影響を強く受けていることが分かった。

● 2002年、Boos Nらによって脊椎関連学術誌「Spine」に発表。(Volvo賞受賞)※

※ Volvo賞とは、腰痛関連のノーベル賞と言われ、その年のもっとも優れた研究に送られる賞である。

腰痛疾患のなかった胎児~88歳までの死体解剖例(54体)と、腰痛疾患を持つ14歳~68歳までの椎間板摘出例(23名)を対象に、20250枚におよぶ腰部椎間板の組織標本を作製し、どちらの標本か知らない第三者の手によって顕微鏡で詳しく分析した。

 

その結果、3歳~10歳で椎間板への血液供給量が減少し始めるとともに軟骨終板にも亀裂が認められ、11歳~16歳では線維輪の亀裂や断裂といった椎間板構造の崩壊がみられた。 

● 2002年、Elfering A らによって脊椎関連学術誌「Spine」に発表。

41名の健常者を対象に、MRIで腰部椎間板を繰り返し撮影し、5年間にわたって追跡調査を行なった。

 

その結果、41%に椎間板変性の発症・進行が見られた。「重い物を持ち上げる」「重い物を運ぶ」「身体を捻る」「身体を曲げる」などの従来の危険因子は影響を受けていないことが分かった。

 

また、腰痛発症率は椎間板変性のある方が低かったことから腰痛と椎間板変性は無関係という結論がでた。

【好発スポーツ】

上記の研究結果により、従来は椎間板への負荷が強いスポーツに多いと考えられていたが、実際は、スポーツの種類により椎間板ヘルニアが生じる可能性は、極めて低い。

【症状】

椎間板ヘルニア自体の症状は特にない。

 

椎間板ヘルニアが神経根を圧迫した場合、筋力低下、感覚異常が生じる場合がある。

しかし痛みは生じない。

 

椎間板ヘルニアによる痛みに関しては、神経が圧迫を受けたMRI画像などをみると、痛いと固定概念で思いがちであるが、実際は痛みを生じない。

 

神経生理学的には、神経根が圧迫を受けた場合、神経線維の太い、運動線維と感覚線維が先に遮断され、痛覚神経は線維が細いため遮断されづらい。

また、仮に痛覚神経が遮断されたとしても、痛みを発するのでなく、その逆で麻痺を起こし痛みを感じなくなる。

運動神経、触覚、圧覚神経 > 痛覚神経

 

よって、一般に首の痛みで病院を受診し、椎間板ヘルニアと診断されても、その痛みと椎間板ヘルニアは直接関係はなく、痛みは別の要因によって生じていると考えられる。


実際に、首の痛みで病院に受診し、椎間板ヘルニアと診断された患者の多くは、MRI画像に変化がなくても、保存療法で痛みは軽減もしくは消失する。

そのことからも、痛みと椎間板ヘルニアが直接関連していないことが推測できる。

 

近年、椎間板ヘルニアと腰痛の無関係を示す質の高い論文も多く出ているので、下記に代表的な論文を3つ紹介しておく。

腰痛研究の分野ではあるが、発生機序は同じであるため、ほぼ同じと考えられる。)

 

【椎間板ヘルニア 世界の研究】 Part2

● 1990年、Elfering A らによってThe Journal of Bone and Joint Surgeryに発表。

腰痛経験のない健常者の腰椎をMRIで撮影し、異常所見の有無を年齢ごとに調査した。

 

結果、腰痛経験のない健常者でも椎間板変性、椎間板ヘルニアは老化とともに増加することが分かった。


腰痛の発症率は、30代、40代がもっとも多く、高齢になるに従い腰痛発生率は低下するので、腰痛発生率と椎間板変性率とも、相関関係がみられない。


● 1994年、Jensen MC らによってニューイングランド医学ジャーナルに発表。

20~80歳までの健常者98名を対象に、腰部をMRIで撮影し、それに腰下肢痛患者のMRI画像27枚を混入させ、内容を知らない2名の神経放射線医が読影させた。


結果、少なくとも1ヶ所以上の椎間板膨隆が52%、椎間板突出が27%、椎間板脱出が1%認められ、どの椎間板にも異常が見られなかったのはわずか36%だった。

 

要するに、腰痛患者も腰痛のない健常者も同じように、椎間板ヘルニアがあり、腰痛と椎間板ヘルニアの関連性はない。


● 1995年、Boos N らによって脊椎関連学術誌「Spine」に発表。(Volvo賞受賞)

※ Volvo賞とは、腰痛関連のノーベル賞と言われ、その年のもっとも優れた研究に送られる賞である。

強い症状を訴える椎間板ヘルニア患者46名と、年齢、性別、職業などを一致させた健常者46名の腰部椎間板をMRIで撮影し、内容を知らない2名の神経放射線医に読影させた。

 

また、事前に心理社会的側面を探るためにアンケートを実施。


結果、健常者の76%に椎間板ヘルニアが、85%に椎間板変性が認められ、MRI所見で、腰痛患者と健常者との間に椎間板ヘルニアのタイプに差はなかった。

 

そして、アンケート調査により、腰痛患者と健常者の間には、心理社会的側面に差があることが分かった。

腰痛は、椎間板ヘルニアによって起きているのではなく、仕事環境因子(心理的ストレス、集中力、満足度、失業)と心理社会的因子(不安、抑うつ、欲求不満、夫婦関係)が影響していることが分かった。